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故に気が付かなかった。
今、自分がどんな顔をしていたのかなんて。
「なっ、何言ってるんだよ!僕は別に……」
何とか誤魔化そうと苦笑いを浮かべる。
けれど、彼女はそんな僕の態度を見抜いているかのようにただ真っ直ぐに僕へと紅い瞳を向ける。
そしてまた、ゆっくりと口を開いた。
「……じゃあ、何でゆーとは〝泣いてるの〟?」
「え……」
一瞬、何を言われたのか理解できなかった。
涙など1滴も流してはいないのに、何故彼女はそんなことを言ったのか。
そう疑問に思う反面、何故か焦りを隠せない自分。
「え、いや、僕は別に泣いてなんかないけど」
そう言うと彼女はふるふると首を横に振って、僕の心臓辺りへ指を指した。
「……?」
本当に、何がしたいんだろう?
アナスタシアの行動に思わず僕は首を傾げていると、未だ指差しながら彼女が口を開いた。
「……泣いてる」
「え……?」
「ゆーとの心が、哀しそうに泣いてるの」
「ッ!?」
その言葉を聞いた瞬間、心臓が大きく跳ねた。
まるで、核心を突かれたかのように。
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