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「あァ? んだてめェは?」
「──っ!?」
不意に掛かったのは、怪訝そうな男の声。
恐る恐る振り向くと、眉間に縦皺を寄せながら威圧するような視線で僕を睨んでいた。
「おいガキ、聞こえてんだろ? ちゃんと質問に答えろよッ!!」
「あっ、あの! ぼっ、僕はっ、その……」
「あァッ!? 聞こえねぇぞッ!?」
「ひっ!!」
ドスの効いた声を畳み掛けるように放つ男に、情けない悲鳴のような声を上げてしまう。
そんな僕の態度が気に食わなかったのか、男は更に苛立ち、僕にも届くくらいの大きさで舌を鳴らした。
「……チッ、おいクソガキ!」
「――ッ!?」
「その女を置いてさっさと消えろ。そうすりゃ命だけは助けてやるよ」
「なっ!?」
あまりの横暴さに思わず口が開く。
それが癪に障ったのか、強面の男の額の皺が更に深くなった。
「あァ? 何か文句あんのか?」
「ひっ!?」
ドスの効いた低い声に怯え、情けない声を漏らす。
……今にも恐怖で潰れてしまいそうだ。
いつもならきっともう逃げ出していただろう。
けれども今日の僕は、何故か逃げることよりも疑問を問いかけることに意識が向いていた。
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