8人が本棚に入れています
本棚に追加
そんな、ただ言われるままに動いて、自己表示を全くしない僕のことを、同級生やクラスメイトは口を揃えて〝人形〟って呼ぶ。
……実際、その通りだなって自分でも思う。
だって、本当にその通りなんだから。
ただ命じられるがままに動く人形。
───こんなこと口にしたら、また愛梨に怒られちゃうな。
クス、と漏れるような小さい笑い声が零れる。
不意に、僕は空を見上げた。
目に映るのは、何処までも何処までも広がる、青く透き通った空。
(いつ見ても、この空だけは変わんないな……)
脳裏を過るのは、楽しかった過去の思い出。
もう2度と取り戻すことのできない、幸せだった頃の日常。
(…………)
どんなに辛くても、悲しくても、苦しくても、あの日枯らしてしまった涙が流れることはなかった。
きっと、〝あの日〟から……全てを失ったあの日から、僕の時間は停まったままなのだろう。
最初のコメントを投稿しよう!