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「……誰?」
「え?……あ」
そう聞かれて初めて、僕は茂みの中から身を乗り出してしまったことに気が付いた。
「あ、や、その……」
「………………?」
(き、気まずい……)
まるでルビーのように煌めく紅い瞳で、ジーッと見つめる彼女。
何とも耐え難いこの状況を打破することなど、この16年間ろくに人と関わってこなかった僕にできる筈がなかった。
「……はい」
「え……?」
不意に、彼女が手に持っていた何かを僕に差し出す。
差し出されたのは、彼女の髪の色と同じ薄桃色の一輪の花。
その花を見た瞬間、僕は目を大きく見開いた。
(……ッ!!この花、確か母さんが好きだった……)
何故なら差し出されたその花が、死んだ母さんが好きだった、プリメラの花だったから。
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