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──結局、僕はただ逃げていただけだったんだな……。
恐怖から逃げ、人を避け、〝人形〟という殻に閉じ籠もった己が自身。
そんな最低な自分に対し、僕はただ頭を垂らし自嘲を浮かべることしかできなかった。
「……ゆーと?」
「え?……ってうわぁッ!?」
不意に名を呼ばれ、声のした方へ顔を向けると、すぐ目の前にアナスタシアの顔が。
「どっ、どっ、どうしたの!?」
眼前に迫ったアナスタシアの顔に驚いて、反射的に後ろへ飛び退く。
そんな僕を不思議そうに眺めながら、アナスタシアはゆっくりと口を開いた。
「何だかゆーと、哀しそうだったから……」
「……ッ!!」
淡々と語る彼女に、思わず息が詰まる。
「あ、え……」
頭の中が真っ白になり、何の言葉も浮かばない。
だって、今まで生きてきた10年の間、人形という殻で僕は自分の気持ちをずっと隠してきたんだ。
愛梨や和也にだって、本当の気持ちは見せなかった。
なのに、目の前にいる彼女は……。
(ど、どうして……!?)
激しい動揺が僕の心を掻き乱す。
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