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名が体を示すのか。体が名を示すのか。
文字通り人がスクランブルするスクランブル交差点は、今日も今日とて忙しない。誰かの世話など妬く間もないくらい忙しない。
信号が青になり、それを知らせる効果音を掻き消すほどの鬱陶しい音を、皮肉にも人の蠢きが共鳴して奏でる。
────日本。欧米化が進み、今では日本男児や大和撫子と世辞なしで呼べる人間が如何ほど存在しているか。
それでも髪色は黒か茶がまだ主流なのを、分を弁えていると表現するのはやや口が悪いか。
そんな中で一際浮いている存在が、スクランブル交差点でスクランブルしていた。
沈んでいると言ったほうがいいのかもしれない。
群青色の鎧を身に纏った、金髪赤眼の幼子。電子レンジ五個分くらいの背丈。
「くっ……ここが噂に聞くヴェルサスクロイチェンか。なるほど耳に悪い喧騒なのだ」
そんな独り言を声変わりすら迎えていない声で真剣に呟く彼女ですら、ここでは二秒以上誰かの目に留まることはない。
「さて、ぶぇるぶぇっとレインの時間なのだ」
少女は不気味に一笑すると、左手から右手へ魔力を送り、いざそれを解き放たんと空へ向ける。
「驚嘆せよ人間共! 暗黒魔法! ぶぇるぶぇっと──」
「感覚的自己解放における威儀認識の戒メェー」
そんな少女の真上から、全裸の男が降ってきた。
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