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だが、興奮は身体の奥に沈むばかりで、気持ちよく弾けることはない。エロマンガのように「イク」こともなければ「飛ぶ」こともない。緊張がほどける気持ちよさがあるだけだ。ちょうどお風呂に入ったときのようにフワフワして気持ちがいいが、言ってみればそれだけなのだ。
舌をいっぱいに伸ばしているために、だんだん顎が疲れてきた。喉が渇き、焦燥が増した。身体をいっぱいにしてもらえるもの、乾いた身体を潤わせてもらうものを欲してしまう。
『セックスしたら、もっともっと気持ちよくなれるの?』
突然、ポケットのなかの携帯が振動した。
「きゃんっ」
リサは子犬のような悲鳴をあげた。
リサの天然ぶりにあきれ果て、なにかあったときのためにと充輝が家族契約した携帯は電話もメールも充輝からしか来ない。リサの中に潜むエッチなところを、充輝に見つけられてしまったようで恥ずかしい。
リサは、後ろめたさと面映ゆさにドキドキしながら携帯を取り出し、ボタンを押して耳に当てようとした。
そのとき、ブルブル震える携帯が、リサの唾液にまみれた乳首に触れた。散々愛撫し、感度が高まりきっていた乳房を、機械的な振動が襲ったのである。たまったものではなかった。
「ーーっ!!」
リサは声もなくのけ反った。
携帯を乳房からはずさなくてはならない。こんな刺激を受けつづけているとおかしくなる。そう思いながらも、身体が硬直したようになってしまい、手が動かない。
「リサさん? あれ? おかしいなぁ」
充輝が何か言っている声が聞こえてくる。彼の声が脳天を直撃した。声でイッてしまったのである。
「あれ? これ通話になってるよな? リサさーん、もしもし?」
リサは、電話に出ることも出来ず、振動している携帯を乳房に押しつけたまま、上半身をのけ反らせている。充輝の声が甘く響き、リサの興奮をより高めていく。
「姉さんっ? 姉さん? あれ? ホントにヘンだ」
硬直がほどけると同時に、身体が痙攣を起こしたように震えだした。サンタ帽が落ち、黒髪が汗にまみれた頬に絡まる。携帯が手からこぼれ、ベッドの上に落ちて弾む。
『電話、し、しなくちゃ……。み、充輝くんが心配しちゃう…』
だが結局、リサは、電話に出ることが出来なかった。意識がスッと薄れてきたのである。震える手を伸ばし、携帯を切るのがせいぜいだった。
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