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☆
「ただいまぁ。姉さん? いないんですか? やっぱりなにかヘンだな」
玄関先で充輝の声が響いている。
浅い失神に落ちていたリサはビックリして身体を起こすと、そそくさとショーツを穿き、ベッドの下にエロ本を放り入れた。携帯をポケットに入れ、ベッドの下に落ちていた鏡をサンタ服の裾で拭き、元の位置に戻す。
「お帰り~」
ドキマギしながら玄関へ行くと、充輝が玄関に腰掛けて、靴を脱いでいるところだった。食材がたくさん入ったスーパーの袋が上がりかまちに置かれている。
「よかった。姉さん。いたんですね。さっき、携帯切れてしまったから心配してたんですよ」
「ごめんね。間違えて切ってしまったの。何だったの?」
「あ、いえ、炊飯器にスイッチ入れてほしいなと思っただけです。でも別に今から高速炊飯すれば間に合いますから……それよりなんかカビくさいですよ」
「そうかな? 私、全然わからないわ」
「でも、なんか匂います。気のせいじゃないですよ」
充輝の部屋でオナニーに耽っていたイヤラシイ自分を見透かされた気分で、顔が真っ赤になってしまう。
だが、言われてはじめて気づいたが、カビの匂いがたしかにする。異臭のおかげで自分の身体から立ち昇る汗と愛液の匂いがかき消されているのは、ありがたいことだった。
「脱衣場? かなぁ?」
充輝は、大きなスポーツバッグを玄関に置くと、脱衣場に向かった。そして洗濯機のフタを開く。一際鋭い異臭がプンと立ち昇った。見た目はまったく普通で、並々と入った水が、入浴剤の淡い青色を見せている。
「リサさん、洗濯機に何かしました?」
「ううん。なにも。充輝くんに教えてもらった通り、ちゃんとお風呂の水を汲み上げて洗濯に使ってるわ」
「このお湯、いつからですか?」
「朝よ。洗濯したあとで汲んでおいたの。だって、お風呂のお湯は朝に抜いて、お風呂の湿気を追い出すんでしょ?」
「それだ! これ、やっぱりカビだ!! 汚れた湯をずっと入れてちゃ、カビも生えるよ」
充輝は重いため息をつき、困ったような悲しいような顔をして顔を振った。
「あー、充輝くんっ。私をバカにしてるんでしょっ!? …確かに悪いことしたとは思ってるけど…」
所在なげにリサが後ずさる。
「これ、洗濯槽のカビ取り剤なんです。だから大丈夫ですよ。……リサさんっ、ちょ、ちょっと後ろ、危ないっ!」
「きゃあぁっ」
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