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「願いを叶える力が3つ、袋の中に残っている」
「シカさん、そ、それって…」
サンタさんが顔を上げ、じっとトナカイ少女を見つめた。喜色と疑問が同時に浮かんでいる。
「テストをしよう。リサは袋の中の力を使って、彼の希望を順繰りにひとつずつ叶えていく。3つの願いを叶え、少年に満足を与えることができたら合格としよう」
「え、で、でも、ダミー品だから力は正規より圧倒的に劣るんですよね?」
疑問を呈する充輝に、トナカイ少女はかみ砕くようにして答えた。
「だからテストなのだ。少年よ。正規品を使ったテストなど、実力のほどを確かめる手段にはなるまいて。それに、ダミーとて、純正品に近い力を持つプレゼントも含まれておるやもしれぬ。運不運が影響するのはテストの常じゃ」
「きゃあっ、すてきぃっ」
見習いサンタのリサは、嬉しそうに両手を胸の前で打ち合わせた。
「シカさんっていいところありますねっ。おもしろそうっ。私、一生懸命頑張って立派なサンタに昇格しますっ!!今年は無理でも来年に大活躍すればいいんだわっ!!」
「これで決まったな。少年よ」
「あっ、あのうっ。トナカイ…いやっ鹿さん?サンタさん特有のなんか魔力的なものは!?」
「ない。それと私は『鹿』でなく『シカ』だ。トナカイであり『シカ』という名を持つのじゃ。」
あっさりと言い切られ、めまいがしそうになった。
「やはり、そなたは理解力に乏しいのぅ。つまり『サンタ』の『リサ』であるように『トナカイ』の『シカ』であってだな…」
「そっちではなくて…魔力の方です。な、なにもないんですか?」
「さよう。天門が閉じてしまったからのう。力を供給する場がないのじゃ」
『このお姉さん、何の力も持ってないってか?力はバッタモンのプレゼント3つだけ!?』
「リサをそなたに預けよう。イヴの夜にリサを迎えに来る」
「ちょ、ちょっと。預けるったって、んな猫の子じゃあるまいし」
充輝はとっさに手を伸ばしたが、トナカイの着ぐるみの少女は、かき消すように消滅した。まるで雪の中に溶けてしまったのではないかと思うほど、唐突な消え方だった。
『困る、困るよ!そなたに預けよう、なんて言われても困るよ…。女の人1人預けられてどうするってんだよ』
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