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「えっと、河西充輝くん、ですね?」
「ええっ?な、なんで名前っ!?」
「自転車に書いてあります。雪比奈(ユキヒナ)高校1年A組河西充輝」
心でも読まれたのかと思ってドキドキしたが、リサの答えを聞いてホッとする。
『このお姉さん。文字が読めるのか。すっげぇ意外!頭弱そうな感じなのに。 あぁそうだよな。サンタだったら、文字ぐらい読めなきゃプレゼント配達できないよな』
自問自答して納得する充輝に、サンタのお姉さんはあどけなく笑いかけた。下がり気味の瞳がいっそう下がってやわらかな弧を描き、可愛らしい印象が増した。
「充輝くん。一つ目のお願いは何ですか?」
ふと気づいた。
『このサンタさん、すげぇ可愛い……』
初めて逢った時は、ぶつかりかけた衝撃と、シカさんの唐突な出現に慌てふためき、ゆっくり顔なんて見なかったのだが、サンタクロース・リサはとても可愛らしかった。
大きな黒い瞳に下がり気味の眉、小さな鼻、花びらのような艶々の唇。黒髪が赤いワンピースに映えて美しい。分厚いサンタ服に身体のラインは隠されているが、それでも胸元を押し上げる双つの乳房のふくらみが豊かなのはよくわかる。手足が長くしなやかな身体つきだ。
「何でも言ってください。私、一生懸命叶えさせていただきます」
瞳をウルウルさせながら迫られると、NOとは言えなくなってしまう。このお姉さんはどう見ても充輝よりも年上なのに、小動物系の可愛いさだ。
泣きぼくろが揺れているところが、充輝の罪悪感じを刺激した。「僕がすべて悪いんです」と謝ってしまいそうになる。
『まぁいいか。ダメもとだよな。命をとられるわけじゃないし』
「じゃあ、一つ目のお願いを言いますよ。本当にいいんですね?」
充輝はドキドキワクワクしながら口を開いた。
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