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『かなえさん』のやり方はこうだ。
まず、自分の願い事を紙に書き、その下に何を供えるかを書き入れる。
次に、その紙を百葉箱の中に入れ、その場で手を合わせて、「おいでませ、かなえさん」と唱える。
そして心の中で、紙に書いた願い事を三回唱えてから、足元にお供え物をして完了だ。
「よし、じゃあ俺から」
手順を確認し終えた俺は、そう言って進み出ると、百葉箱の正面に取り付けられている、扉の前に立った。
石か何かで思いっきりぶっ叩けば簡単に壊せそうな、見るからに安物の錠前が掛けられたその扉の隙間から、願い事を書いた紙を無理矢理中に挿し込み、その場に屈み込んで手を合わせ、
「おいでませ、かなえさん……」
と唱える。
それから心の中で願い事を三回唱え、持ってきた物をそっと足元に置いた。
俺が持ってきたのは、祖母が毎日飲んでいる、コンド何ちゃらという成分が配合された健康食品だ。
『かなえさん』がもし霊的な何かだとしたら、こんな物を供えても、何の意味も無さそうだが……まぁ、問題は無いだろう。
俺はゆっくり立ち上がり、健とバトンタッチした。
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