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「前から決めてたんだ。夏休みが終わったら告白するって……。智也も知ってんだろ?美優、中学受験するってさ。あいつは俺達と違って、頭良いから……」
その話は、俺も人伝に聞いていた。
公立校に進む俺や健とは違い、美優は中学受験をして、私立の学校に行くらしい。
つまり来年の四月には、俺達三人はバラバラになってしまう。
そうなる前に、想いだけでもちゃんと伝えておこうと、健はこの計画を立てたそうだ。
「智也、こんな事に付き合わせて、悪かったな。正直、『かなえさん』なんて信じちゃいないんだけど……願掛けってやつ? 美優と両想いになれますようにってさ」
「……そっか、やっぱお前もだったのか」
「……“お前も”? 智也、それって……?!」
その時だった──。
「……君ノオ願イ……叶エテアゲル……」
「……っ!?」
──何だ?!
全身が総毛立った。
か細く弱々しいが、地の底から響いてくるような、不気味な女の声が辺りに木霊し、俺達は咄嗟に顔を見合わせる。
自分の声ではない──。そう否定するように、小刻みに首を横に振る健の表情が、見る見る内に青ざめていく様が、暗闇の中でも判った。多分、俺も……。
それで互いに、空耳では無かった事を確認すると、今度は素早く周囲に視線を走らせ、闇の中へ目を凝らしてみた。
しかし、人の姿はおろか、気配すら感じられない。
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