エピローグ

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  稔麿が、喧騒にハッとすると、そこは池田屋の前の通りだった。 確か池田屋の二階から飛び下りて── 「……夢?」 あの出逢いは、恋心は、夢だったのだろうか。 池田屋の二階を見上げるとふと、声が聞こえた気がした。 『稔麿さん』 無意識の内に手首に目を落とすと擦り傷と痣だらけだった。 「あぁ、この傷も痣も……」 茜と共にいた紛れもない証。 そっと手首に触れるとポツリと呟いた。 「僕、戻って来たんだ……」 何を思ったか稔麿は駆け出す。 ただひたすらに長州藩邸を目指して──。
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