「こんにちは、お侍さん」

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  ほどなくして吉田は茜の視線に気付いたらしく、彼女へと目をやる。 「何? 僕の顔に何かついてる?」 「いいいいえっ! ただ吉田さんって綺麗な顔しているなぁ、と」 「うん、知ってる」 「…………」 そうか、ナルシストだったか。把握。 一人頷いて茜はところで、と切り出した。 「吉田さんは何故そんな格好をしているんですか?」 着物に刀、髷こそ結ってないもののまるで時代劇にでも出て来そうな風体である。 (ん? 待てよ……。刀所持って本物だったら立派な銃刀法違反じゃ……) 一瞬そんなことが頭を掠めるも初対面の者を脅して家に上がり込むような輩に追求は無駄と見たか敢えて訊かなかった。 稔麿は一度自身の着物に目を落としたものの小首を傾げるばかり。 「え、いや皆こんなものでしょ。君こそなんでそんな異人みたいな格好しているの?」 「異人みたいなってただのパジャマですよ、これ。それに着物なんて今じゃほとんどの人は着ません。江戸時代じゃあるまいし。皆が皆着物着用していたのはせいぜい幕末くらいまでです。坂本龍馬や桂小五郎がいた時代ですよ?」 その途端、稔麿の目が変わった――。  
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