「こんにちは、稔麿さん」

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  茜は消毒薬をティッシュにたっぷりと含ませる。 「ちょっと染みますけど我慢してくださいね?」 「……ッ」 茜が傷口に触れると声にならない息が稔麿の口から漏れた。 痛みは彼の眉間に刻まれた深い皺から明らかだ。 「痛みますか?」 「今までこんなに痛めつけられたことなんてなかったからね。だから後悔してる」 「へ? 何をですか?」 痛めつけられたことがなかったことでも後悔してるというのか? 茜は小首を傾げる。 「この僕を痛めつけたアイツらを殺しておかなかったことを。刀で串刺しにしておけば良かった。いや、火炙りの方がいいかな。うーん」 「…………」 ……聞かなかったことにしよう、うん。 とんでもなく物騒な事をサラッと口にした稔麿に茜の方が後悔した。 (稔麿さんがこんな人だってわかってたのに訊くなんて私の馬鹿あああ!!) と。 暫くテキパキと処置を施していた茜にふと声がかかる。 「茜」 「はい?」 茜は手当てする手を止めないまま、稔麿の顔を見る。 稔麿は思いのほか真っ直ぐな目で茜を射ていた。 「で? 何なのさ。僕に言いたいことって」 「ああああのですね、」 どもりにどもる茜。 (このタイミングで訊いてきたかぁぁぁ!!) 脳内パニック状態で目は宙を泳ぐ泳ぐ。 稔麿が珍しくからかわずにじっと茜の返答を待っているだけなのも怖い。 (絶対に言おうって決めてたんだからっ……!) 握った拳に自然と力も入る。 ごく小さな声だったかもしれない。 「私、稔麿さんのことが好き……です」 茜は稔麿の顔を正面から見据えて言い放った。 そのため、彼の目がみるみるうちに丸くなるのもやはり見逃さなかった。
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