始まりは、狂気

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『バケモノ』は、腹は膨れ、手足には鋭く尖った爪。全体にびっしりと生えた毛、大きな目が赤くギョロリと動き、口には牙、赤い雫が垂れる。そして耳は尖り、辺りの音を聞くようにピクピク動く。 さわさわ 風が流れ始める。 辺りに草木が揺れる音が聞こえる。 『バケモノ』は、鋭く尖った爪を転がる塊に突き刺しズルズルと引きずり始める。 引きずられていく跡が、赤く光る。 ざわり。 風が一層強く吹く。 その風と共に、頭上には黒い雲が、月を隠し始める。 明るかった路地裏が一気に暗くなる。 しかし、反射するものは何もないはずなのに、赤く光る二つの丸がギョロリと動いたかと思うと高く飛び、闇に消えた。 ざわざわ 月を覆っていた雲が晴れ、また再び路地裏に光が差す。 しかし先ほどまでいた『バケモノ』と塊は跡形もなく消え去っていた。 これが始まり。 運命が回り始めた瞬間。 たった数分の出来事である。
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