第二章

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 ……とりあえず、コハルちゃんは俺と焔がなにをしようとしていたのかまではわからなかったようだな。セーフ。  んじゃあ、後は―― 「焔、その……なんだ、もう目のゴミは取れたみたいだし、いったん降りてくれないか?」  俺はあくまでも自然に焔が膝から離れられるよう、ワザと始めに適当な事を言って焔にアイコンタクトを送る。  頼む、気付いてくれ! 「……あっ、うん、ありがとね國ちゃん」  俺の意図を見事汲み取ってくれた焔は空気も読んでくれたのか、わざわざ目を擦りながら俺の膝から降りてくれる。  が、寸止めのところでおあずけを食らったせいか物凄く残念そうな顔をしていた。  ……うっ、そんな捨てられたチワワのような目でこっちを見ないでくれ。俺もせっかくのチャンスがふいになって結構悔しいんだから。 「……えーと、コハルちゃんでいいんだっけ?」  あまりにも焔の表情を見ているのが辛くなってきたので、俺は焔の隣にいるコハルちゃんに水を向ける。 「うん! 春日コハル! 四月で六歳になりました!」  そう言って、紅葉のような小さい手でVサインを作るコハルちゃんに俺は話を続ける。 「そうなんだ。それで、今日はお父さんと一緒にこのゲームに参加したのかな?」 「んーん、違うよー。なんかねー、コハルがお父さんを捜しに探検してたら変な機械があってね。そこに入ったら、いつの間にか学校にいたの」 「この子、元々は迷子の子で、ゲームにはまったく関係のない子どもだったんだべよ」  と、コハルちゃんの言葉に焔が補足して説明する。  ……なるほどね、どうりでおかしいとは思ってたんだよ。  こんな小さい子どもが、このゲームに参加しているだなんて。 「ん、それで、困っていたコハルちゃんを焔が声をかけたってな感じか?」 「うん」 「ふぅん……」  俺はコハルちゃんに「次からはお父さんと逸れないようにな」と、頭を優しく撫でてやりながら、思う。  この子に次はあるのだろうか? と。
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