第二章

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* 「……二重人格ぅ?」  俺は二杯目に突入した生温い麦茶を飲み込みながら、隣でペットボトル飲料水を両手で持った剣に返事を仰ぐ。  ちなみに、剣の持つペットボトルは焔を助ける前にPDAで買った物らしい。  飲み物は一つ一〇〇AP、食い物は一つ五〇〇APだそうだ。俺は麦茶がもったいないからこっち飲むけど。  ……っていうかこの娘、ついさっき聞いた話なんだが、どうやら俺が焔と男達が言い争いをしているところを見ていた時にはもう性格の違う剣で二人ほど殺っちゃっていたらしい。  しかも、俺が後ろから襲われそうなところを間一髪でだ。  そいつらの頭を一人ずつ後ろから掴んで、ゼンマイよろしく一八〇度回してやったんだと。  ……正直、俺の知らない間にそんな出来事があったのかと考えるだけでゾッとする。  襲ってきた方もそうだが、なによりも無音で人を二人ほど殺している剣が一番恐ろしいわ。 「は、はい……」  俺の質問に、剣は首を小さく縦に振って肯定の意。前々から思ってたけど、剣って絶対に聞き役だよな。俺から話を振らないと、まったく話が進まん。  まぁ、性格的にしょうがないけどさ。 「それじゃあアレか、話をまとめると、剣はそのデザートイーグルに触れるともう一人の剣が表に出てくるわけなんだな?」  俺は剣のレッグホルスターに収められた白銀と漆黒のデザートイーグル〈カリバーン〉と〈レーヴァテイン〉を指さして聞くと、恥ずかしそうに目線を逸らして首を縦に振った。 (〈カリバーン〉に〈レーヴァテイン〉ねぇ……)  カリバーンは『アーサー王伝説』に登場するアーサーが少年の時、誰にも引き抜く事ができなかった王剣〈カリバーン〉を引き抜いた事から伝説が始まった剣の名前。  さらに、レーヴァテインは北欧神話に登場する唯一、神を殺す事ができるといわれた宝剣の名ときたモンだ。どちらも、デザートイーグルに名付けても恥じない名前だな。 「ふむ……」  俺は顎に指を乗せてしばらく考えを巡らせた後、口を開く。 「……なぁ剣、よかったら、そのデザートイーグルを俺に見せてくれないか?」 「えっ、でも……」 「いいから」 「……はい」  剣はやや気の乗らない様子で右手をスカートの中に滑り込ませ、ステンレスシルバーの〈デザートイーグル〉に……触れる。
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