第二章

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 刹那、剣は西部劇に出るガンマンよろしくデザートイーグルを抜くと、一瞬の無駄もなく〈カリバーン〉の切っ先を俺の額へと突きつけた。 「剣! その手ば下ろして!」  ワンテンポ遅れて、焔がレッグホルスターから〈ワルサーP38〉を抜いて剣の頭に照(フロント)星(サイト)を向ける。さすが焔だ、さっきまでイチャイチャしてただけあって行動が早い。 「ヘイヘイ〈爆弾狂(ボマー)〉、アタシはコイツを撃つ気なんてサラサラねーから、その銃を下ろしな。隣のガキが怖がってる」 「く……っ!」  焔は隣で困り果てた表情をしているコハルちゃんを一瞥した後、渋々といった顔でその手を下ろす。  ここで焔が引いてしまったのはちと想定外だが……おおむね、計画通りに事が進んだな。  待ってたぜ、もう一人の剣。 「オタク野郎(ギークボーイ)……アタシは、向こうのアタシが自分の意思でこのアタシを呼ぶんならまだいい。アタシは、いわばアイツのために戦う剣だからな」  そう言って、剣は俺に〈カリバーン〉を向けたまま舌打ちを一つすると「だが……」と、弁舌を続けた。 「アタシは、他人の意志で呼ばれるのはアテにされてるみたいで大嫌いなんだよこンのボケナス。テメーじゃなかったら今頃、この部室でチリソースパーティーが開かれてたところだ」 「わ、ワリィワリィ。本当に触れると出てくるのかと思ってつい、な。あと、ついでに言っておくが俺の名前は戦國戦兎な。FPSは好きだがオタクじゃねぇ」 「フンッ、そんな事は言われなくてもわかってる。あっちのアタシが保有する記憶や経験は、こっちのアタシにも引き継がれてるからな」  剣は〈カリバーン〉を俺の額から外すと、ドカッと壁に背中を預けて地べたにあぐらをかいた。
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