第二章

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もし、剣がターミネーターの仲間かなにかだったら話は別だが、このご時世、まだ人間ソックリのロボットなんて創作の世界にしかいねぇから、その線は薄いと言っても過言ではないだろう。 っていうか、絶対にありえん。  そして、そのおかしさに拍車をたてるのが『剣の二重人格』だ。  このゲームはクローズドβテスト……いわば『サービスの試作品を限られた人にだけ提供する』というもの。すなわち、今現在その試作品を一番早く利用しているのは俺達『プレイヤー』というわけだ。  まぁ、剣と焔の二人はゲーム開発に協力した戦場戦の曾孫でもあるから、俺達より早くプレイする事ができるだろうが……それにしたって、たかだか数週間じゃそこらで二挺のデザートイーグルを扱えるはずもない。  きっと、なにか裏があるはずなんだ。俺が知らないような深い『裏』がな。 「ハッ、このアタシを呼ぶくらいだから、いったいどんな質問が飛んでくるかと思ったら……まぁいい、向こうのアタシを助けてくれたお礼に教えてやるよ。アタシと、戦場家にまつわる秘密をな」  言って、剣はクルクルと器用に回していた〈カリバーン〉の銃(グリ)把(ップ)をパシッと掴むと、向かい側にあるロッカーに狙いを定めた。 「アタシら戦場一族はな……年に一回、親戚同士で殺し合いをするのが『一族の掟』になっているんだ。もちろん、そんなクソみてーな掟を作ったのは一族の長である戦場戦。あのクソジジィだ」 「な……っ!」  剣の口から発せられた『殺し合い』という言葉に、俺は思わず紙コップを床に落としてしまう。  今コイツ『親戚同士で殺し合う』って言ったよな!?  って事は、剣と焔は一度……いや、今日まで何回も命のやり取りをしたって事かよ!? 「なんでったってそんな……」 「いいから黙って聞け。それで、アタシ達はその『掟』通り、物心ついた時から色んな場所で戦わされてきた。ある時は木刀一本持たされて、相手が動かなくなるまでボコボコにすれば勝ち。またある時は――」 「スラム街で、一番人間ば殺した人が勝ちってのもあったべな……」  俺の隣でそう口にした焔は、まるで神に懺悔する罪人のように重く、苦しそうな声で言った。
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