6人が本棚に入れています
本棚に追加
「まっ、さっき焔が言ったのは極めて稀なケースだったが、こうしてアタシ達は毎年毎年、身内同士で戦わされた。もちろん、歳を重ねていく内にドンドン戦いが激化するわけだからアタシ達が小学生の頃には法の目に触れぬよう訓練所……といっても、これは戦場戦が勝手にアタシ達ん家の地下に作った代物なんだけどな。で、銃を握っていた自称『富豪』の戦場戦は海外で結構ヤバめな仕事をしているからな、銃なんて裏ルートを使えば簡単に手に入るっつうわけだ」
「バーン」と、ロッカーに向かって〈カリバーン〉を撃つ真似をしつつ、剣は続ける。
「アタシが思うに、きっと両親は自分の子どもが死んで欲しくないがために銃の使い方や人の殺し方を教えてはいるんだろうが……それにしては、目がマジになり過ぎている。なぜだかわかるか? 戦兎」
「そんなの、わかるわけねぇだろ……」
仮にわかったとしても、答えたくもねぇ。
あんなふざけた思考をしている奴の考えている事だ、絶対トチ狂った理由に決まってる。
「だろうな、それじゃあ教えてやるよ。『金』だ。アタシ達の両親はな、毎年行う『一族の掟』で勝った者には大量の金を戦場戦からもらってんだよ」
「……っ!」
〈カリバーン〉を片手に淡々と語る剣を前に、俺の心は真新しい紙で指を切った傷のようにジクジクと痛みだす。
「普段、おら達の家は曾お爺ちゃんからお金ば一銭ももらえないから『一族の掟』が近くなるとみんなピリピリしてておっかないんだべよ……」
「焔のところは、訓練所の設備に金突っ込み過ぎて貧乏だからな。そんなんでまた負けたら、そろそろ両親に尻穴増やされるんじゃねーか?」
「うぅ……それだけは勘弁してほしいべよ……」
まるで冗談の言い合いでもしているかのごとく話す二人の姿に、俺はなんとも形容のし難い怒りがこみ上げてきて奥歯をギリッと軋ませる。
最初のコメントを投稿しよう!