第二章

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(なんで……なんでだよ!)  もし、この空間に剣達の姿がなかったらロッカーを二・三発ほどブン殴ってヘコませていたかもしれない。  だってそうだろ? 自分の職業をふざけて『富豪』と名乗ってしまうほどの大金持ちが、なぜ親戚全員に金を渡してやらないんだよ。  しかも、わざわざ親戚同士を……俺とさほど歳の変わらない女の娘達に人殺しまでさせて! いったいなんの意味があるってんだ! 「なぁ……なんで二人はそんな平気そうな顔していられるんだよ……」  ついに我慢の限界を迎えた俺は、鉛のように重たくなった唇を動かして、聞く。  が、この一言が剣の逆鱗に触れてしまったらしく、〈カリバーン〉の銃把(グリップ)で頬を思い切り殴られた俺は頭から勢いよく地面に叩きつけられた。  そんな剣の憤怒した姿を見て怯えるコハルちゃんを尻目に、学ランの胸ぐらを掴まれる。  殴られた頬はズキズキと痛みだして熱いし、頭はクラクラするしで酷い状態だ。 「これのどこが平気そうに見えるってんだよクソ野郎! お前聞いたよなぁ!? なぜアタシがデザートイーグルを使いこなせるかって! アタシの人格が二つあるのかって! それはなぁ! すべて生き残るためなんだよ!」 「ちょっと剣――」 「うるせぇ焔! テメーはすっこんでろ!」 「ひぅっ!」  怒り狂う剣を止めようと一歩前に出た焔だが、彼女の恫喝で再び後ろに下がってしまう。 「元々なぁ、アタシなんて人格はアイツの中にいなかった! けどなぁ! 優しいアイツが日々の訓練や『一族の掟』……人殺しの苦痛に耐えるには必要だったんだよ! アタシという存在が!」  剣はもう一度〈カリバーン〉の銃把(グリップ)で殴りつけると「コイツもそうだ!」と、怒声を張り上げた。 「一発で確実に相手をブッ殺せる銃はコイツしかないと思ったから、必死こいて使いこなせるようにしたんだよ! 使えなけりゃ今頃くたばってるか、もしくはスラム街でストリートギャング共の玩具にされてたかもしれねぇ! それくらい……それくらいアタシ達は生き残るために必死だったんだよ!」  もはや何発殴られたかも忘れてしまうほどに、剣の攻撃は休みなく続く。  それはまるで、今までの鬱憤をすべて俺にぶつけているかのように――
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