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面倒くさそうな表情で校庭を見下ろしていた彼女の姿が浮かぶ。あの横顔に惹かれてしまったんだと思う。
だから話しかけた。そして話してみて、ますます惹かれてしまったという事に気がついてしまったんだ。
「どうせ俺はこのまま女装し続けるんだ。彼女を好きだろうが好きじゃなかろうが関係ないだろ」
「何だよ、何かやる前に諦めるっておかしいだろ。その格好だっていつかしなくて済むかもしれないし」
「そうなったらいいけどな。あぁそれと、あの有希って奴には気を付けないとな」
「有希って、神谷さん?何で?」
本当に不思議そうな顔で問いかけてくるけど、あの女はお前の事を嫌ってんぞ。絶対に。
紀月ちゃんに対する態度と、男が嫌いだと言った事。俺に告げた言葉からしてあの女はきっとヤバい。
「俺の事、男だって気付いてやがる」
『紀月は騙せても、私は騙せないわよ。里玖君?』
今、目の前で言われているくらいはっきりと思い出せる。気持ち悪いくらい甘えた様な声が。
どうやら紀月ちゃんに言うつもりはないようだが、これからどうするべきか。あれを味方にするのは無理だ。
「あの子さ、すっごい加賀屋さんの事好きだよな」
「そりゃそうだろ。あれはきっと友達としての好きじゃないだろうな」
「え、何?どう言う事?」
「簡単に言えばレズって事だろ。あぁ、百合って言った方がいいか?」
いきなり立ち止まった宗也に合わせて立ち止まる。どうせ止まるだろうなと思ってたから怒らねぇけど。
真っ青な顔してやがる。そりゃ、そう言う人間がこいつの身近にいる事がなかったからな。
ちょっと違うけど、俺の姉ちゃんがおかしいからこういう事には微妙に耐性がある。
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