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とりあえずパジャマから制服に着替えて、邪魔になるこの長い髪を一つに結う。その間もいい案は浮かばない。
いつも思いつかないから、結局はまた早月を甘やかしてしまうのだ。これは多分私も悪い。
「姉ちゃん、あいつ来たぞー!」
「おいシスコン、誰の事をあいつ呼ばわりしてんのよ!」
「うるせぇな、害虫!お前いつまで姉ちゃんにベタベタしてんだよ!!」
「害虫!?年上は敬うものよ、そんな事も分からないのかしら」
下の階から聞こえてくる言い争いの声も日課。毎日毎日、よくもまぁ汚い言葉が次から次へと。
小さい時はあんなに可愛かったのに、どうしてあんなに生意気なガキになったのか。私に素直だからまだいいけど。
有希も有希だ。昔と比べて有り得ないくらい性格が変わっている。時々着いていけなくなる。
「里玖だけが救いよね」
高校で出来た友達。可愛くて笑顔を絶やさない彼女だけが、唯一の普通の人間なのではないか。
自分の部屋から一階に降りると、今まで言い争いをしていたはずの二人が一斉に私を見る。怖い。
「おはよう紀月!今日も美人ね」
「おはよう。朝からくだらない事言わないで」
「……事実なのに」
顔を洗いに洗面所まで向かう途中、悲しそうに呟く有希の声を聞いた。けど構うと調子に乗るからそのまま無視。
はっきり言って疲れる。朝からテンションの高い二人の相手は私には無理で。母さんに助けてもらいたい。
けど気配はない。どうやら今日は朝早くから仕事に行ってるようで。本当についてない日だ。
責めても仕方ないけど。もう少し私がしっかりしてたらこんなに疲れないのかしら。
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