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桜が舞い散る校庭。それだけ聞いたらとても幻想的な光景を想像する人の方が多いと思う。 しかし現実はどうだろう。其処彼処に桜の花びらが散っており、それらは人に踏まれてぐちゃぐちゃになっている。 「どこが幻想的なんだか」 呆れて窓からそれを見ていた。誰にも気にされる事なく散っていくそれは、何を思っているのか。私には考えつかない。 散るという事は死ぬという事。それを躊躇う事なく受け入れられるのだから、植物というのは強い生き物だ。 「……なんてね」 ため息をつく。今日は入学式だというのに、どうやってもテンションが上がらない。鬱になりそうで怖い。 私、加賀屋 紀月(かがや きづき)は今、教室にいる。そこで担任になる教師を待っていた。 どうせなら一生来なければいいのに。中学の時も思っていたけど、授業なんて存在している意味が分からない。 それにあれだ、高校には留年というものがある。頭があまりよろしくない私でも、出来ればお近付きになりたくないものだった。 この学校に一緒に入った友達とはクラスが離れてしまったし、周りを見ても仲良くなれそうにない人ばかり。 というか、隣の席が空いている。もう少しでチャイムが鳴りそうなのに、まだ現れていないらしい。 退屈な学校生活になりそうな予感がして、また息を吐く。仕方ない、ここを選んだのは私なのだから。 出来れば楽しく過ごしたい。けど欲張ったらすぐに駄目になると分かっていた。平和に暮らせればいいと、そう心から願う。
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