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あれから時が経ち、放課後。この高校で初めて出来た友達である紀月ちゃんが手を振りながら帰っていく。 その横には、当たり前だという様な表情をしている女が一人。彼女は紀月ちゃんの大親友らしい。 しかし親友にしては異常なくらいの愛情を向けている。もしあれを向けられたら、堪えられる自信はない。 教室からは一人、また一人と生徒達が姿を消す。それなのに、まだ宗也がやってくる様な気配は感じられなくて。 「何してんだ、あいつ」 椅子ではなく机に座る。ちゃんとクラスメイトの姿がないか、それだけはしっかりと確認して。 もし見られてしまえば、聞かれてしまえば。ここでの生活が出来なくなってしまう。それだけは避けたい。 友達が出来た。どこか冷たい表情をした美人さんが。紀月ちゃんには、俺が男だという事を気づかれたくない。 「悪い、里玖。遅れた」 「おせぇ。何分待ったと思ってんだよ殴るぞ馬鹿宗也」 「だから悪かったって。それにしても、見事な猫かぶりだよな」 苦笑しながら言うそいつの腹にパンチを一つ。そこを押さえながら呻いている馬鹿を睨む。 ずっと、中学から性別を偽って生きてきた。これくらい出来て当たり前だと、こいつも分かってるはずだ。 「さっさと帰んぞ」 「はいはい、分かりました」 苦笑したまま俺の後ろを着いてくる。何をやっても怒らない、俺の唯一の味方に視線を向ける。 カッコ良くて優しくて。非の打ち所がないような好青年。宗也は昔からよく女子から告白されていた。 今日友達になったばかりの紀月ちゃんも、こんなタイプが好きなのだろうか。なんて、くだらない事を考える。 どうしてこんなにも気になってしまうのか。俺は別に馬鹿でも鈍感でもないから嫌でも分かるが、認めたくない。
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