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第四章「U・S・H(アルティメット・サディスティック・ハニー)」
「つまり、あの子が貴女との結婚を回避するためには三年以内にプロ入りしなければならない」
話を聞き終えた今、ツァンはなんか色々どうでも良くなった。
「その通り…それと、あの方が心から愛する女性が現れた場合、この婚約は破棄される事になっていますの」
「成る程ね…で、あの子がボクに惚れると思う?」
「思いませんわ、微塵も。しかし億分の一でも可能性があるのなら躊躇無く潰せというのが我が家の家訓ですので」
「どんなご家庭なのよ……」
がっくりと項垂れるツァン。とんだとばっちりである。この恨みは乃亜に会った時に百倍返しかないと決意する。
「あぁ……なんだかどんどん野蛮になってくボクがいる……」
「心中お察ししますわ」
「だったら解放してくれても良いと思うんだけど!?」
「それは出来ません」
「アァーッ!!」
ジタバタと暴れてみるも、上体を椅子に縛られた状態では何も出来ない。唯一の救いと言えばどういうつもりなのか椅子が電動リクライニングであり体に負担がかかりにくい事か。一応拉致では無く接客のつもりなのだろうか?
「はぁ……早く帰りたい」
「お可哀相に。何も知らないとは言え私と乃亜様の間に割って入ったばかりにこんな目に……」
「割って入るどころか全力でスルーしてたしこんな目に合わせてるのは貴女なんだけど!?」
「まぁ、乃亜様に興味が無いなんて……ひょっとして他にお慕いしている殿方がいらっしゃったのですか?」
「え、ちょ、な、ななんでそうなるのよ!?」
突然あらぬ方向に話が飛んできた。それも急所に向かって。
「まぁ…図星でしたの?それは大変失礼をいたしましたそれでは参考までにどの殿方に好意を抱いているか聞かせてもらえますか?」
「か、勝手に話を進めないでよ!?」
所変わっていつもの廃ビル。
「……お師匠、助けに行かなくて良いんですか?」
「え、なんで?」
「いや、なんでって……」
「お前の家庭の問題でツァンが巻き込まれたんだろ?お前が助けに行くのが筋だろうが」
「いやですよ恐ろしい」
即答だった。
「……時たま見せるお前の素が恐ろしいわ」
「今に始まった事じゃないですし、いちいち相手してたら身が持ちませんよ。一日経てば謝礼付けて解放されますから放っておきましょう」
「……お前、多分父親似だな。絶対」
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