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髭面の男は狼狽しており、公一はというと憮然とした顔で服の損傷を確認している。
「どうすんだよコレ・・・お前の甲斐性じゃ千年たっても弁償できねぇぞ。」
女性は信じられないといった風に両手を口元にあて、同時に目は好奇心で輝いていた。
「ぐぅぅぅ・・・このぉぉぉ!!」
髭面の男は力任せに大振りに拳をくりだす。なにゆえこの手の輩は攻撃が単調なのか。公一はこれもまた避けずに、逆に拳に向けて鋭いジャブを放つ。髭面の男の拳からポキリと乾いた音がした。驚愕の表情を浮かべる男の顎に、公一はすかさず蹴りを入れる。これは無駄な痛みを感じさせぬようにという公一特有のやさしさである。髭面の男は脳震盪を起こし、痛みを感じる間もなく、子分達の埋まっているゴミ山に仲良く頭を突っ込んだ。
公一は再度服の損傷を確かめると、舌打ちしながら路地の表へとUターンした。
「あの・・・ちょっと待ってください!!」
後ろから公一を呼び止める声が聞こえた。からまれていた、被害者未遂(?)の女性である。公一はすっかり失念していた。
「ん?」
「あのっ・・・!危ないところをどうも・・・」
女性はきっかり90度、深々と頭を下げた。公一はすこしばかり感心した。ここまで頭を下げることができる人間は日本人でもそういない。
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