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「おいおい,さっきのはあんまりだろ」
校門を出て家の方向へ歩き出した僕を真が追い掛けてきた。真とは家が同じ方向なので,お互い用事がないときは一緒に帰っている。徒歩で15分くらいといったところだろうか。
「いいんだ。読んでから断ったらますますショックだろ」
「そりゃあそうかもしれないけどよぉ……」
「何も今日だけの出来事じゃないだろ」
歩いて帰る僕たちの脇を自転車に乗った生徒が次々と追い抜いていく。太陽は,もう夕日といった方がふさわしい時間帯になっており,初夏にしては涼しい風が吹き抜けていった。
「やれやれ……こんな調子じゃ卒業までに何人の女子が順也にふられるんだか」
「……まるで僕が全部悪いみたいな言い方だな」
「そんなに未由のことが忘れられないのか?」
「!!」
未由――その名前が出た途端,僕は真をにらみつけた。
「おぉ,怖……」
「未由は……未由は僕がああさせたも同然だよ」
「お前もまだそんなこと言ってるのか。あれは事故だったかもしれないじゃないか。お前のせいとは限らないだろ」
「下にいた僕の顔を見てから屋上から飛び降りてもそんなことが言えるのか?」
「それは……オレはそのときその場にいなかったから良く分からないが……」
真がこれ以上は何も言うまいというように口をつぐんだ。
「未由は……まだあそこで眠っているんだ」
僕たちが歩いているその先……学校と家のちょうど中間に位置するように,病院があった。
「でもまだ生きている。そうだろ?」
「…………」
未由が好きだった。自分で言うのも変だが,未由も僕を好きだった。
順風満帆に中学校生活を送っていたのに……
未由は屋上から飛び降りた。
事故でも事件でもない,未由の自殺……正しくは自殺未遂だった。
木々がクッションになって,かろうじて命は助かったが,未由は今もあの病院で眠り続けている。医者曰く,いつ目を覚ますか分からないのだそうだ。
逆を言えば,いつ死ぬかも分からない……ということにもなる。
「僕は……未由以外の人を好きになって良いのか分からない」
「未由以外の人を……ね。それでお前はそんな風に変わっちまったわけか……」
3年前……
あの日僕は……
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