プロローグ:あの日,空が赤く……

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「よし順也,帰るか」 「悪い,今日は委員会があるんだ」 いつも一緒に帰っている真だが,こうして用事があるときは別々に帰っている。図書委員という地味な委員会だが,最高学年である僕がサボるわけにはいかなかった。 だが…… 「あれ?未由?」 同じ図書委員の未由の姿が見えない。未由の性格からして,先に行っているということはないと思うんだけど…… 「ああ,吉野さんならさっき帰ったよ」 「…………」 同じクラスの女子にそう言われ,僕はガックリとうなだれた。 「あれ?3年2組の女子委員は?」 「すみません。今日は用事があるので欠席です」 忘れて先に帰ってしまいましたとは言えるはずもなく,委員長の女子には何とかごまかしで通した。 「……そうですか。まあ今日は3年だけの集まりなのでいいでしょう。本日の活動は,先日取ったアンケートの集計と図書整理です。各クラスでまとめたアンケート結果を提出したクラスから図書整理に移ってください」 委員長がそう言うと,集まった6クラスのメンバーはそれぞれ自分のクラスの集計を始めた。 「未由がいないから僕は一人でやるのか……」 2人いれば,一人がアンケート用紙に書かれた番号を読み上げ,もう一人が集計するといった流れができるのだが,一人でやるとなかなか面倒な作業に思えてきた。 そんなことを心の中でぶつぶつとつぶやきながらテーブルにつくと,対面に一人の女子生徒が腰掛けた。 「真中?どうしたの?」 誰かと思い顔を上げると,隣のクラスの真中理沙が僕と同じように一人でアンケート用紙を抱えていた。 真中は僕と同じバスケ部で,性別は違うが同じポジションだったので,お互いアドバイスをして実力を高めあってきた。性格はおとなしく,端から見るとバスケ部には見えない。髪は肩にかかるかどうかといった長さで切り揃えられている。かわいらしい容姿をしているので,よくモテる……らしい。今度真に聞いてみよう。 「あの,順也くん……私のクラスの男子も休んじゃって……。一緒にやらない?」 「えっ?」 「あっ,迷惑ならいいんだ。私ってこういう作業遅いし……」 確かに……真中がバスケで速攻の先頭を走っているのも見たことがない。一応,ガードなんだけどな……
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