プロローグ:あの日,空が赤く……

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「いいよ,一緒にやろう。その方が早く終わるし」 「えへっ,ありがとう順也くん」 「あ,ああ……」 まさか,真中の笑顔がそんなにかわいかったなんて……そんなこと言えるはずがない。 「じゃあ,私が紙に票数を書いていくから,順也くんは番号を読み上げてもらっていいかな?」 「ああ,いいよ」 約20にも及ぶ質問に対し,1から4まで丸をつけられているアンケート。一人でやったら途方もない作業だったけれど,真中と一緒にやるのは不思議と時間が早く経っていくような気がした。 僕と真中のクラスの集計を終えて,今度は図書整理の作業に移った。返却期限が過ぎている本はないかや,ちゃんとあるべきところに本が戻っているか,乱丁などはないか……などなど。 クラスごとにエリアが指定されてあったので,僕と真中はまた一緒に作業をすることにした。 「えっと……夏目漱石の本はどこだっけと……」 「あっ,こっちだよ順也くん」 真中が指差す先には,確かに夏目漱石シリーズの本棚があった。にしても……中学生が夏目漱石の本を借りるのだろうか甚だ疑問に思ってしまう。どうやら,僕たちが整理しているエリアは文学系らしい。 「よいしょっと……あれ,届かないや」 「僕がやるよ」 真中が一番高いところに本を戻そうとしていたが,おそらく身長は150㎝くらいだろうか。あと少しのところで手が届いていなかった。 「よっと……」 「えっ……?」 真中が持っていた本を手を伸ばして本棚に戻す。その作業が終わって一息つくと,なぜか隣にいた真中の顔が赤かった。 「真中?どうかした?」 「あっ,あの……」 「??」 特に顔が赤くなるような出来事はなかったと思うのだが,真中は僕から視線をそらし……でもまだ顔が赤い。 「じゅっ,順也くんの顔が近かったからびっくりしちゃって……」 「…………あ」 確かに。本棚の最上段は僕でもつま先立ちをしないと届かなかった。本を戻すのに夢中になって,まさか真中の顔がかなり接近していたとは……。 ……てか,今も十分近い。真中との距離は数センチしかなく,すぐそこに真中の形が良くてふくよかな唇が…… ――って,何を考えているんだ僕は!? 「いや,あの……これは!」 ガンッ!! 「うっ!」 後ろにあった本棚に後頭部を強打し……
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