籠女

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都会にしては珍しく広い敷地を持つこの小学校の裏には小さな森がある。 しっとりとした腐葉土から蝉(せみ)の蛹(さなぎ)が長い穴暮らしを終え、 儚い一時の為にその背中を割り空に羽ばたく頃、 三年五組の僕のクラスには転校生がやってきて、教室の黒板の前に立ち自己紹介をしていた。 『えー、今日からみんなと一緒に勉強する事になった船越賢治君だ』 『あ…船越賢治です…よろしくお願いします』 良く言えば細マッチョ しかし大概の人達は彼の事を痩せっぽちだとか、中には病弱だとか云う人も居るかもしれない。 事実、彼は病弱だった。 彼は転校してきて直ぐに学校に来なくなってしまった。 家が近所だったと云うだけの理由で僕は何度か先生に賢治くんへの使いを頼まれた。 「八神、船越の家に寄ってくれないかな?」 その日も僕は先生に手渡された数々のプリントと、 何故か今日の給食で配られたオレンジゼリーを手渡されお使いを頼まれた。
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