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会場に来ても、僕は黙り込んだままだった。
倉木の妹と一緒に立ちすくんでいるだけだった。
倉木の妹…
友梨香。
まだ8歳なのに、兄をなくしてしまったんだ。
友梨香はギュッと僕の手を握って下唇をキュッとかみしめていた。
泣きたいのだろう。
泣けばいいのに。
どうして泣かない?
疑問に思っていたら、友梨香はまたギュッと力をこめ、手を握った。
「悠輔くん。お兄ちゃんとこ行きたい。」
そう言われた僕はドキッとした。
友梨香も倉木のとこに逝く…?
だが、友梨香は棺を指差していたので分かった。
棺の前までくると僕は倉木の顔をみた。
安らかな顔しやがって。
「お兄ちゃんね、友梨香の前でひかれたの。」
「え…?」
「ドンって。」
手を握る力が一層強くなった。
「悠輔くん…お兄ちゃん見えない?」
「!!」
僕は驚いた。友梨香、なんでしってるの?
「悠輔くんは幽霊が見えるから凄いってお兄ちゃん話してたんだ。」
「倉木が…」
倉木、本当に口が軽いな。どれだけ秘密の話を他人に話してしまうんだ。
変わってなかったよな。
今まで。
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