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──ポクポクポクポク。
地面を叩く、影一つ。
──テクテクテクテク。
道路を歩く、足一つ。
道を歩く。
道を道を、歩く歩く歩く。
羽のように軽やかに。それでいて官能のように艶やかに、だが機能性に満ちてしなやかに──そして、何よりも軽やかに。
その足音は軽く、あらゆる思いを忘れさせる。
一歩、また一歩。
彼女がリズムを刻むように歩を進めると、コンクリートは彼女の進行を喝采するかのように足音を反響させた。
楽しいな愉しいな、ゆかいだな。
■■は美麗な顔を破顔させつつ、自らの心境を喝采する。
向かい風もなんのその。一切の邪念も孕まない雰囲気を纏いながら、小さい歩幅で突き進む。
あ、汚れてる。
■■は右手首にある赤い跡を見つけ、さっきのかな、と汚れを服にこすりつける。
あちゃー。にじんじゃった。 身に纏う白地のTシャツに、黒ずんだアカイロが斑する。
Tシャツ以外はズボンも靴も、何も身に付けていない体にその赤は官能味を強調させる。
蠱惑的。
未だ発達し切らない躰には相応しくない表現ではあるが──十にも達しない、年端もいかない少女は、十分に雄を誘えるだけの魅力に満ちていた。
ちょっとやり過ぎたかな。反省反省。
始まりは、つい半刻前だというのにも関わらず、■■は既に幾つコワ(・・)したか記憶に留めていない。
一つ目は八回だった。気がする。
ニ個目は五回。だったような。
三■目は一回。うん。
アハ。
技術の上達に体温が高揚する。
体温の上昇に精神が快楽する。
この行為はこれ以上ないほどに魅力的で、そして何よりも、気持ち良かった。
「そこの君。右手に持っている物を、今すぐ捨てなさい。慌てなくていい、私たちは君の味方だ」
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