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あの日、年老いた男が息絶えていくのを見にいった。
風のない、月の綺麗な夜
長年に渡る戦いの決着は男の寿命により終わりを告げた。
「渡辺…私の勝ちだ」
どうか、安らかに。
痩けた頬に手を伸ばす。
風が薙ぎ、月が隠れた。
腕を捕まれる。慌てて振り払おうとする。一瞬。
「…茨木…」
男が笑う。共に行こう、と。
自身の胸に飲み込まれているのは忌々しいあの剣。
鬼斬り。
ふと、笑いが込み上げた。何故かはわからないが。
嬉しかったの気もする。
「あぁ、行こうか」
こんな最後も私らしい。
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