目覚め

3/4
前へ
/4ページ
次へ
目の前を火花が散ったような感覚があった。 温かくまぶしい、今は昼だろうか。 茨木は瞼を閉じたままそう思った。 長く眠っていたのか、体が重い。 ゆっくりと瞼を開ければ飛び込んできたのは銀の丸い月。 昼だと思ったのはどうやら気のせいだったようだ。 ゆっくりと体を起こす。節々が軋み微かに呻き声をあげた。 「起きたか」 背後から声がし、振り返る。 反射的に腰に差した剣に手をかけようとしたが見当たらない。 「刀ならここだ」 狼狽え、間合いをとった茨木に、男はそれを掲げてみせた。 すぐさま相手の手にあるものを奪おうと手を伸ばすが、すんでの所で手を引っ込められ指先は虚しく空をきった。 「返せ!!」 怒りが込み上げ、声を張り上げて相手を睨み付ける。 しかし男の顔を見たとたん、音を立てて血の気が引いていった。 「お前、なんで…」 そこにいたのはかつて死闘を繰り返し、仲間を殺し、腕を切り落とした憎き人間の男。 私を本当の鬼にした男。 「渡辺ぇっ!!」 歳を取り、死んだ筈の男が若い頃の姿で現れた。 なんだ、貴様も化け物だったのではないか!鬼である自分と対等に、それ以上にやりあえたのはそういう事だったのか。 怒りと少し
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加