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置き忘れられた
カバーがついた文庫本
きっと前に降りた人のモノだったのだろう
とりに来てもらえず
ただ電車の中で待っていた
待っていた
それなのに
人の行き交う混雑の車内
その本の場所には人が座っていた
人が降りた
後には本の形はなく
ただ別の人が座り始める
本は待つことをやめた
本当は待ち続けたかったのかもしれない
本当はとうに待つことを放棄したくチャンスを窺っていたのかもしれない
誰にもわからない本のキモチ
本の行方は誰も知らない
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