葬儀屋とシスター

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爛れた匂いが嗅覚を突く。人の焼ける匂い、感情の琴線に触れる。ひたひたと降るにわか雨が煩わしい、いっそ洗い流すくらい降ればいいものを。 刑事としては失格なのだろうが、この匂いは我慢ならない。人間としての本能が、この場を嫌悪している。 隣で同じように死体を見ていた若い刑事が口を開いた。 「うっ……この匂い、もっと雨降ってくれればマシになるんすけど」 「馬鹿か、これ以上降ったら全部流れちまう……言ってる暇あったら鑑識を急がせろ!」 「は、はい!」 若い刑事はネジでも巻かれたみたいに、路地の外へと走っていった。 「……こいつは、新米には荷が重いか」 中年の刑事は一人になった後、そう呟いた。
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