夏目という平凡な美術教師

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夏目は地味な男である。 休日は一人で美術館に行き、一通り作品を見たあと、隣接した図書館で本を読むのが日課だった。 夏目が転勤する上でもっとも落胆したのは、休日にこの憩いの場に通えなくなることだった。 二回目の転勤は比較的近場での異動だったが、三回目は県境の僻地だった。 しかし家庭を持っている同僚に比べ、独身の自分の方が身軽に異動できる分、適任なのだろうと受け入れていた。
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