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夏目は社交的な男ではない。
もちろん道で会った全くの他人に話しかけるような男でもない。
道の真ん中で仁王立ちする女の存在に気づいたものの、女の後ろを何事もなく通りすぎるつもりであった。
黒髪の女も夏目の存在を意識するわけでもなく、その目は今だ交番を見据えている。
夏目が女を五メートルほど先に見据えたとき、女は振り向いて乱れた髪をかきあげた。
一瞬女と夏目の視線が合ったが、女はすぐに視線を反らし、足早に交番の前を去って、右手の角を曲がって視界から消えた。
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