世界の果て

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――「世界は広いの?ずっとずっと遠くには何があるのかな?」 小さな頃の彼女は、 遠くを見つめながら そう話した。 ――「世界の果てってあるのかな?」 その声は、ずっと私の耳に残ってた。 だから、 私は世界を旅してみようと 思ったのです。 「いってらっしゃい。」 と、彼女は笑顔で 手を振ってくれた。 その言葉と笑顔に 私は手を振り返した。 世界は広い。 森をぬければ、街があって… 街を出て少し歩けば 砂漠がありました。 氷河もありましたよ。 氷で出来た川です。 歩いて渡れるのですよ。 世界は広い。 同じ街なんて無いんです。 同じ人なんていないんです。 同じ景色なんてないんです。 面白いでしょ? 旅の途中、空が途切れたことはありません。 雲が空を漂うように、 私も世界を漂っていたのでしょう。 星の数はすごく多いんですよ。 月はとても丸いんです。 真っ暗な中に輝く星や月は 本当に美しいと思いました。 ――「世界は広いの?ずっとずっと遠くには何があるのかな?」 世界は広いですよ。遠くにあるのは… ――「世界の果てってあるのかな?」 どうなんですかね?世界の果ては… 彼女に聞かれたことの答えを 考えながら 旅をしていました。 旅の終わりは… 「おかえり。」という彼女の言葉と笑顔と涙。 私はその言葉に 「ただいま。」と返しました。 何から話しましょうか。 あなたに話したいことがたくさんあります。 伝えたいことがたくさんあります。 ――「世界は広いの?ずっとずっと遠くには何があるのかな?」 世界は広いですよ。 ずっとずっと遠くには「おかえり」と 笑顔で迎えてくれるあなたがいました。 ――「世界の果てってあるのかな?」 世界の果ては、この場所のようです。 すごく懐かしくて愛おしい、 あなたと一緒に過ごした場所です。 他に何か知りたいことがありますか? そう彼女に聞いてみたら、 ――「旅は楽しかった?」 と、聞いてきたので 「はい。」と、答えました。 ――「世界はどんなところ?どんな場所だったの?」 私に目を輝かせて聴いてくるので 「そうですね。世界は――…。」 と、旅で見たものを… 思ったことを… 伝えたいことを…彼女に話したのです。 その長い話を ずっとずっと目の輝きを失わせず 彼女は聴いていました。
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