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電車に揺られる事三時間余り。
降り立ったのはN県堺町。
冬場は豪雪地域で知られるこの街も、今は夏の厳しい日差しに晒されている。
そこは人や車が目まぐるしく行き交う住み慣れた街とは大分異なり、市街地中心部にある筈の堺駅から見渡す景色は、酷く閑散とした雰囲気に思えた。
そのせいだろうか。時間の流れがゆっくりに思える堺の空気は、やけに甘ったるく感じる。
僕がこの街に来たのは他でもない。
仕事に躓き、恋人とも別れた僕に、父は自分を見つめ直す事を進めてきた。
その休息の場として、この街に住む父方の叔父を訪ねる運びとなった。
叔父はこの街で開業医を営んでおり、事情を聞いた叔父は二つ返事で僕を招いてくれた。
ありがたい事ではある。
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