2004年~夏~

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駅から歩く事二時間強。 辟易としながら手にした叔父自記執のメモを見る。 メモに書かれているのは地図の類ではなく一行、 『海岸線から道なり』 それだけだ。 海岸線までは20分程で何の問題もなく出る事ができた。 しかし実際海岸線に出てみると、道は左右に伸びていた。 当然、渡されたメモ以上に叔父の家を探す手掛かりは無い。 岐路に立たされた時年甲斐もない羞恥心で現地の人に道を尋ねず、二分の一の賭けに出たのは僕の落ち度だ。 しかしこんな紙切れ一枚渡してくる叔父も大概だと思う。 感を頼りに海岸線を歩く事一時間余り。 次第に辺りからは建物や人の影も減り、時たま通りかかる際に耳にした車の排気音も、直ぐに波の音一色へとなっていく。 己の過ちに気づき、来た道を戻るのに更に一時間。 原点から歩き始めて間も無く45分くらいか。 駅を出た際はまだ高い位置にあった太陽も、今は水平線に触れようとしている。
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