117人が本棚に入れています
本棚に追加
学食で昼食を終えた湯川と栗林は研究室で実験の準備をしていた。
栗林「先生、もうそろそろ機材変えませんかぁ?」
湯川「…」
栗林「湯川先生。」
湯川「…」
栗林「湯川先生!」
すると湯川は徐に目を開け、栗林を睨むように見つめた。
栗林はソレに動揺したのか、苦渋の表情を浮かべた。
湯川「…僕が…ココを辞めたら、どうします?」
栗林「はい…?」
湯川「…。…いえ、やはり何でもありません。」
コーヒーカップに目を落とす湯川。中はからっぽで、残った液が溜まっているだけだ。彼は立ち上がり、やかんを火にかけた。なかなか思うようにコンロがつかない。三回ほど捻ったところで、ようやく火がついた。
しばらくしたところで、やかんが湧いた。湯川はコンロの火を止め、コーヒーカップに湯を注いだ。カップの中は、段々と黒く染まっていった。
彼はソレを持ち上げて、机上に置いた。学生のレポートは、散らかったままだ。
一口啜り、目を閉じる。
湯川が目を開けようとしたそのとき―
(コンコンッ)
ガチャリ、と戸が開く。
湯川「内海君?」
内海「あ、お疲れ様です。」
湯川「…?」
湯川は目を見張った。婚約者である内海の後ろに、見知らぬ男がいたからだ。
内海「4年ほど前にお世話になった、先輩の弓削さんです。私達のことを草薙さんから聞かれたらしく、その…先生のお顔を見たいらしく💦」
弓削「どうも、警視庁に勤める弓削です。」
湯川「そうでしたか、初めまして。湯川と言います」
弓削「…へぇ~。内海お前、すげぇな」
内海「へ?」
弓削「こんなカッコイイ人と結婚すんだろ??なんて言うかなー…。見直したわ、お前のこと」
内海「…ソレ、褒め言葉として受け取っていいんですかー」
弓削「おぉ。」
そんな応酬を湯川はちらっと見て、コーヒーを一口のんだ。時計を見る。あと数十分で学生達が戻ってくる。湯川はかけてあった白衣を翻すように着て、部屋から出ようとした。
内海「先生っ?」
湯川「…なんだい」
内海「…怒ってますか…」
湯川「なぜ」
最初のコメントを投稿しよう!