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内海「それは…、…」
湯川「僕は少し出かけてくる。もうじき学生達が戻っくるだろうから、長居にはくれぐれも気をつけてくれ。」
早口でまくし立てるように述べた彼は、部屋から出ていった。室内には気まずい雰囲気が流れた。
栗林「内海刑事のせいですよ」
内海「あたし!?」
栗林「だってそうじゃないか!弓削さんと仲良さげに話すからダメなんです」
内海「先輩なんだからちょっとやそっと…」
栗林「わかってないなぁ、貴方は。」
内海「何が!!」
栗林「相手が草薙さんならまだしも、先生自身に関係性がない男性と話してたんですよ?」
内海「それがどうしたって…あ…。」
栗林「先生もだけど、内海刑事も相当鈍感ですよ。早く謝りにいった方がいいんじゃないんですかー」
内海は躊躇った後、部屋から駆け出すように出た。残された弓削は、栗林の方に視線を向けた。
栗林「なな何ですか。」
弓削「助手の方ですか?」
栗林「そうですけど。」
弓削「湯川先生って、意外にヤキモチ焼きなんスね。なーんか、堅そうなイメージだったけど…」
駆け出したものの、内海は湯川を見つけられずにいた。何年間も通い続けているこの大学には慣れているはずなのに、と内海はそんな思案を浮かべた。
必死に探すうち、内海は疲れてきた。突然、ひざががくんと落ちていく。ヒールのせいで、足を捻ったのだ。
内海「わっ!?」
バタン、よりも少し軽快な音を立ててコケた。
内海「いった…。…ありえない…」
内海は拳をぎゅっと握りしめ、だん、と地面を叩いた。痛くて堪らないのと、情けないのとが混ざった気持ちになったからだ。
「全く…君はいつまで経ってもおっちょこちょいだな…」
手が差し延べられる。その先を視線で辿って見ると、湯川がいた。
内海「湯川先生っ!」
湯川「どうした、立たないのか」
内海「あっ、いえっ。ありがとうございます」
彼女は湯川の手を借りてようやく立ち上がった。
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