準備2

3/5
前へ
/21ページ
次へ
内海「それは…、…」 湯川「僕は少し出かけてくる。もうじき学生達が戻っくるだろうから、長居にはくれぐれも気をつけてくれ。」 早口でまくし立てるように述べた彼は、部屋から出ていった。室内には気まずい雰囲気が流れた。 栗林「内海刑事のせいですよ」 内海「あたし!?」 栗林「だってそうじゃないか!弓削さんと仲良さげに話すからダメなんです」 内海「先輩なんだからちょっとやそっと…」 栗林「わかってないなぁ、貴方は。」 内海「何が!!」 栗林「相手が草薙さんならまだしも、先生自身に関係性がない男性と話してたんですよ?」 内海「それがどうしたって…あ…。」 栗林「先生もだけど、内海刑事も相当鈍感ですよ。早く謝りにいった方がいいんじゃないんですかー」 内海は躊躇った後、部屋から駆け出すように出た。残された弓削は、栗林の方に視線を向けた。 栗林「なな何ですか。」 弓削「助手の方ですか?」 栗林「そうですけど。」 弓削「湯川先生って、意外にヤキモチ焼きなんスね。なーんか、堅そうなイメージだったけど…」 駆け出したものの、内海は湯川を見つけられずにいた。何年間も通い続けているこの大学には慣れているはずなのに、と内海はそんな思案を浮かべた。 必死に探すうち、内海は疲れてきた。突然、ひざががくんと落ちていく。ヒールのせいで、足を捻ったのだ。 内海「わっ!?」 バタン、よりも少し軽快な音を立ててコケた。 内海「いった…。…ありえない…」 内海は拳をぎゅっと握りしめ、だん、と地面を叩いた。痛くて堪らないのと、情けないのとが混ざった気持ちになったからだ。 「全く…君はいつまで経ってもおっちょこちょいだな…」 手が差し延べられる。その先を視線で辿って見ると、湯川がいた。 内海「湯川先生っ!」 湯川「どうした、立たないのか」 内海「あっ、いえっ。ありがとうございます」 彼女は湯川の手を借りてようやく立ち上がった。
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!

117人が本棚に入れています
本棚に追加