第零席 幡随院、外史で仁義を果たすのこと

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「クッソ……野郎……」 路地裏に放り出され、壁に背中を預けそのまま座り込んだその姿。 その男は、ボロボロだった。 あちこちに傷があり血が吹き出ていた。 「やっぱり単身はキツかったなァ……」 仁義を通し続け、敵の本拠地に単身で乗り込み敗れた。 しかし男に後悔は無かった。 例え武士道から外れようが己が信条の為に闘ったのだ。 「我が任侠道に一片の悔いなしっ……!ってか……ダメだ、血が足んねェ……」 男の意識が遠のく、その時だった。 「例え血を流そうとも信念を曲げないその姿、かっこいいわねん!アタシ痺れちゃうわん!」 気味の悪い声に切れかけてた男の意識が一気に戻る。 「誰だ……?」 そこに立っていたのは筋骨隆々の男だった。 「アタシは三国一の漢女(オトメ)、名はチョウ蝉よん♪」 「その……漢女だか何だか知らねェが……この死に体の男に何のようだ……?」 「あなたに好機を与えるわ」 「好機……?」 「そう好機よ」 チョウ蝉と名乗った男?は名を名乗った時より落ち着いた口調で喋りかけてきた。 「あなた、自分の生き方に後悔はしてはない?」 「無論だ」 「嘘ね」
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