第壱席 幡随院、白馬長史に拾われるのこと

3/12
前へ
/51ページ
次へ
幡随院長兵衛は大の字で仰向けになって地面に倒れていた。 「……んっ……」 長兵衛は薄く目を開けた。 目の前に広がるは、青空である。 上半身だけ体を起こし、周囲を確認する。 「どこだ……ここは?」 周りには遥か遠くにのびる地平線と所々に山が見えるだけ。 どうやら日の本ではないらしい。 少なくとも江戸では無い。長兵衛はそう言いきれる。 「あのチョウ蝉とかいう野郎、俺をどこに飛ばしやがったんだ?」 周りを確認しながら、考える。 しかし答えなぞ見つかるはずもなく。 そして更なる疑問が次々と出てくる。 「そもそもあの野郎は何者なんだ?吉原で働く女か男かは知らねェが、あんな奴吉原で見たことはねェし、それに……」 長兵衛は己の体を見る。 「あんだけ傷だらけだった体がなんともねェ……どうなってやがる」 あちこちに傷が出来、血だらけだった体は何事も無かったかのようだった。 今の長兵衛には、あまりにもわからない事が多すぎる。 彼自身がそれを体感していた。 「まぁ、『考えるより動け』だな。考えてても好転しなさそうだしなァ」 そう言って立ち上がろうとしたときだった。 「待ちな、兄ちゃん」
/51ページ

最初のコメントを投稿しよう!

410人が本棚に入れています
本棚に追加