プロローグ

2/2
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ
―もし、二人が出会ったことに特別な意味があるのなら、それは永遠を作るためだったのだと思いたい。 長い人生の中で一瞬すれ違うだけでも、傷つけ合うためでもなく、最後の日まで支え合い生きていく、そのために…… 繋いだ手を離さずに歩き始めた。 少し先を歩く彼は振り返って優しく微笑む。 変わらずに天に在る太陽のように、いつも温かく見守って、導いてくれる。 彼に追いつきたくて、私は歩みを速めようとした。 その瞬間、強い風が吹いて、目の前にいる彼は砂のようにさらさらと消えていく。 「待って、行かないで!!」 どんなに叫んでも、願っても、それを止めることはできない。 「……お願いだから、そばにいて」 彼のいなくなってしまった世界に一人佇む私の声は、誰に届くわけでもなく、辺りに虚しく響き渡った―。 悪い夢から覚めると、そこは自分の部屋で、私はベッドの上に横になっていた。 うっすらと開けた瞳で辺りを見回してみても、特に変わった様子もなく。 カーテンの隙間から差し込む朝陽が眩しくて、その光を遮るように布団をかぶった。 私の頬には一筋の涙が伝う。 切なくて胸が張り裂けそうで、助けをもとめようと手を伸ばしてみても隣には誰もいない。 そうだ、彼はここではない遠くの街へ……。 今年の春、大学へ通うために遠くの街へ行ってしまった。 彼とは夢の中でしか逢えないのに、そこでも離れ離れだなんて残酷すぎる。 おまけに目の前で消えてしまうなんて、思い出しただけでもぞっとしてしまう。 それはまるで悪いことが起きる前触れを思わせる。 本当に彼がいなくなってしまったらなんて、考えたくもないことが頭の中で膨らんで、不安で居ても立ってもいられず。 ベッドから跳び起きて携帯を手に取った。 私は祈る気持ちで電話をかけてみる。 ―プルルルル、プルルルル……と、鳴り続ける呼び出し音がもどかしくて、心のなかで何度も「早く出て」と呟いてみる。 それなのに、彼は電話に出なかった。 「なんで、電話に出ないの」 何度もかけ直してみても繋がらない電話に、焦りと不安は増していくばかり。 その焦りや不安が無駄なことなのはわかっていた。 何があっても彼のことを信じて、二人の関係に自信を持っていればいいと思っている。 けれど、悪い方へ考えてしまうと、それを簡単に拭い去ることはできなくて……。 ゛今、何してる?゛ そんなメールを送った、土曜日の午後。
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!