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―もし、二人が出会ったことに特別な意味があるのなら、それは永遠を作るためだったのだと思いたい。
長い人生の中で一瞬すれ違うだけでも、傷つけ合うためでもなく、最後の日まで支え合い生きていく、そのために……
繋いだ手を離さずに歩き始めた。
少し先を歩く彼は振り返って優しく微笑む。
変わらずに天に在る太陽のように、いつも温かく見守って、導いてくれる。
彼に追いつきたくて、私は歩みを速めようとした。
その瞬間、強い風が吹いて、目の前にいる彼は砂のようにさらさらと消えていく。
「待って、行かないで!!」
どんなに叫んでも、願っても、それを止めることはできない。
「……お願いだから、そばにいて」
彼のいなくなってしまった世界に一人佇む私の声は、誰に届くわけでもなく、辺りに虚しく響き渡った―。
悪い夢から覚めると、そこは自分の部屋で、私はベッドの上に横になっていた。
うっすらと開けた瞳で辺りを見回してみても、特に変わった様子もなく。
カーテンの隙間から差し込む朝陽が眩しくて、その光を遮るように布団をかぶった。
私の頬には一筋の涙が伝う。
切なくて胸が張り裂けそうで、助けをもとめようと手を伸ばしてみても隣には誰もいない。
そうだ、彼はここではない遠くの街へ……。
今年の春、大学へ通うために遠くの街へ行ってしまった。
彼とは夢の中でしか逢えないのに、そこでも離れ離れだなんて残酷すぎる。
おまけに目の前で消えてしまうなんて、思い出しただけでもぞっとしてしまう。
それはまるで悪いことが起きる前触れを思わせる。
本当に彼がいなくなってしまったらなんて、考えたくもないことが頭の中で膨らんで、不安で居ても立ってもいられず。
ベッドから跳び起きて携帯を手に取った。
私は祈る気持ちで電話をかけてみる。
―プルルルル、プルルルル……と、鳴り続ける呼び出し音がもどかしくて、心のなかで何度も「早く出て」と呟いてみる。
それなのに、彼は電話に出なかった。
「なんで、電話に出ないの」
何度もかけ直してみても繋がらない電話に、焦りと不安は増していくばかり。
その焦りや不安が無駄なことなのはわかっていた。
何があっても彼のことを信じて、二人の関係に自信を持っていればいいと思っている。
けれど、悪い方へ考えてしまうと、それを簡単に拭い去ることはできなくて……。
゛今、何してる?゛
そんなメールを送った、土曜日の午後。
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