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「部長、ご自宅から会社に戻る時に、一度スーツに着替えにアパートに戻られたそうで、郵便物のなかに見つけたそうですよ。空さんからのバースデイカードを。」
私はハッとして父の鞄を探してなかを探った。
見覚えのある封筒がハンカチに丁寧に包まれていた。
父の誕生日の半月前、仕事が忙しくなる前に書いておいた物だった。
でもすっかり忘れて投函していなかったはずだった。
「宛名も書いてあったし、切手もはってあったから、私がついでに出しておいたのよ。」
背後から母のこえがした。
「もう…勝手なことして…」
私は再び涙が溢れてきた。
悲しみと後悔の涙から、安堵の涙に変わっていた。
恥ずかしかったけど、離れて暮らす父の身体を心配している事も、中々お嫁に行かなくてごめんねとか、もう少し二人の娘でいたいとか、素直な気持ちを綴った。明朝出すか出さないか迷って出せずにいたのだ。
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