18人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ
父の私物などの片付けがあるので、彼と携帯番号とアドレスを交換し、丁寧にお礼を言って見送った。
「長沢さんっていうんだ…」
アドレス登録の時に名前をあらためて再確認した。
家のなかに入ると、静けさだけが残っていた。
「淋しいのはこれからね。」
母の言葉が胸をしめつけた。
「♪♪♪♪♪♪」
遠くでかすかに着信音らしき音が。
「この音、あの人の携帯の着信音だわ!」
涙目の母。
父の鞄を再びあさり、携帯を取りだし出てみた。
取引先の営業の人で、父の訃報をしらなかったらしい。
事情を説明すると大変驚いていた。
携帯を切ると、私はなんとなく父の携帯が気になって、メールを開いた。
「全く…仕事のメールとお母さんからのメールしかないよ。」
予想はしていたが、真面目な父の人柄が感じ取れた。
「ほとんど一言返事だったけど…もうそれもないのね…」
母は遺影に語りかけていた。
最初のコメントを投稿しよう!