最後の言葉

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父の私物などの片付けがあるので、彼と携帯番号とアドレスを交換し、丁寧にお礼を言って見送った。 「長沢さんっていうんだ…」 アドレス登録の時に名前をあらためて再確認した。 家のなかに入ると、静けさだけが残っていた。 「淋しいのはこれからね。」 母の言葉が胸をしめつけた。 「♪♪♪♪♪♪」 遠くでかすかに着信音らしき音が。 「この音、あの人の携帯の着信音だわ!」 涙目の母。 父の鞄を再びあさり、携帯を取りだし出てみた。 取引先の営業の人で、父の訃報をしらなかったらしい。 事情を説明すると大変驚いていた。 携帯を切ると、私はなんとなく父の携帯が気になって、メールを開いた。 「全く…仕事のメールとお母さんからのメールしかないよ。」 予想はしていたが、真面目な父の人柄が感じ取れた。 「ほとんど一言返事だったけど…もうそれもないのね…」 母は遺影に語りかけていた。
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